相続した実家を売ると決めても、「何から始めればいいのか」「普通の家の売却と何が違うのか」と戸惑う方は多いものです。不動産の売却は人生で何度も経験することではないため、不安になるのは当然です。

結論からお伝えすると、相続した実家の売却は「相続登記→査定→媒介契約→販売→売買契約→引き渡し」という8つのステップで進みます。通常の売却と大きく違うのは、最初に相続登記(名義変更)が必要な点です。

この記事では、8ステップの流れと各段階の注意点、税金の特例の概要までを解説します。全体像が見えれば、あとは一歩ずつ進めるだけです。

実家売却の流れ8ステップ|全体像

まずは売却完了までの流れを一覧で確認しましょう。期間の目安もあわせて示します。

ステップやること期間の目安
1. 相続登記実家の名義を相続人に変更する1〜2ヶ月程度
2. 相続人間の合意売却方針・分け方を話し合う並行して実施
3. 査定依頼複数の不動産会社に査定を頼む1〜2週間程度
4. 媒介契約依頼する不動産会社を決めて契約数日
5. 販売活動広告掲載・内覧対応3〜6ヶ月程度
6. 売買契約買主と契約し手付金を受領数日〜2週間
7. 引き渡し準備荷物の撤去・決済の準備1〜2ヶ月程度
8. 決済・引き渡し残代金受領・所有権移転・確定申告1日(申告は翌年)

全体では、スムーズに進んで6ヶ月〜1年程度を見ておくとよいでしょう。それでは各ステップを見ていきます。

ステップ1〜2|相続登記と相続人間の合意

相続登記をしないと売却できない

亡くなった親の名義のままでは、家を売ることはできません。まず相続登記(不動産の名義変更)を行い、相続人の名義にする必要があります。

また、相続登記は2024年4月から義務化されており、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の登記が必要とされています。正当な理由なく怠ると過料の対象になり得ます。戸籍の収集や遺産分割協議書の作成など手続きは煩雑なため、司法書士に依頼するのが一般的です。詳細な要件は司法書士に確認してください。

相続人全員の合意を先に固める

兄弟姉妹など相続人が複数いる場合、「売るかどうか」「いくら以上なら売るか」「売却代金をどう分けるか」を先に合意しておくことが重要です。販売開始後に相続人の一人が反対して話が止まる、というのは典型的なトラブルです。そもそも売るべきか迷っている段階なら、実家は売る?貸す?判断基準も参考にしてください。

ステップ3〜4|査定は複数社比較が基本

名義の整理と並行して、不動産会社に査定を依頼します。ここで大切なのは、必ず2〜3社以上に査定を依頼して比較することです。

査定額は会社によって数百万円の差が出ることもあります。ただし「高い査定額=高く売れる」ではありません。契約欲しさに相場より高い査定を出す会社もあるため、査定額の根拠(近隣の成約事例)を説明できるかを判断基準にしましょう。

依頼する会社を決めたら媒介契約を結びます。媒介契約には3種類あります。

  • 一般媒介: 複数社に同時に依頼できる
  • 専任媒介: 1社のみに依頼。自分で買主を見つけることは可能
  • 専属専任媒介: 1社のみに依頼し、自己発見取引も不可

それぞれ報告義務の頻度などが異なります。遠方の実家なら、活動報告が定期的に届く専任系の契約を選ぶ方が状況を把握しやすい傾向があります。

ステップ5〜6|販売活動から売買契約まで

販売が始まると、ポータルサイトへの掲載や内覧対応が行われます。空き家の場合は不動産会社に鍵を預けて内覧を任せられるため、遠方でも進めやすいでしょう。ただし、家財が残ったままだと内覧の印象が悪くなり、売れにくくなる傾向があります。販売開始までに片付けを進めておくのが理想です。家財の処分にかかる費用は家財道具の処分費用はいくら?を参考にしてください。

購入希望者が現れたら、価格や引き渡し時期の条件交渉を経て売買契約を結びます。契約時には手付金(売買代金の5〜10%程度が一般的)を受け取ります。契約書の内容、特に契約不適合責任(雨漏り・シロアリなどの不具合に関する売主の責任)の範囲は、古い家では特に重要です。不明点は契約前に必ず不動産会社に確認しましょう。

ポイント: 古い実家は「現状のまま・契約不適合責任を免責する特約付き」で売る方法もあります。価格は下がりやすいものの、引き渡し後のトラブルを避けやすくなります。条件は不動産会社と相談を。

ステップ7〜8|引き渡しと売却後の税金

契約から引き渡しまでの間に、残った家財の撤去や公共料金の精算を済ませます。決済日には、残代金の受領と同時に所有権移転登記を行い、鍵を渡して売却は完了です。

売却で利益(譲渡所得)が出た場合は、翌年に確定申告が必要です。相続した実家の売却では、次のような特例の名称を耳にすることがあるでしょう。

  • 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除: いわゆる「空き家特例」。要件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円の控除が受けられるとされる制度
  • 取得費加算の特例: 相続税を納めた場合に、一定額を取得費に加算できるとされる制度

ただし、これらの特例には建物の建築時期・売却期限・耐震要件など細かな条件があり、適用できるかどうかの判断は個別性が非常に高い領域です。適用可否や税額の計算は、必ず税理士や税務署に確認してください。特例の存在を知らずに売却の進め方を決めてしまうと不利になる場合があるため、売却前の早い段階で相談するのがおすすめです。

注意: 税金の特例は「売却のタイミングや方法」によって使えなくなることがあります。契約後ではなく、査定の段階で税理士に相談しておくと選択肢を残せます。

売却前にやることの整理はチェックリストで

実家の売却は、登記・片付け・税金と確認事項が多岐にわたります。抜け漏れを防ぐには、やることを一覧化して一つずつ潰していくのが確実です。実家じまいチェックリストに売却前後の確認項目をまとめていますので、あわせて活用してください。

よくある質問

Q. 家財が残ったままでも売却活動を始められますか?

始めること自体は可能ですが、内覧の印象が下がり、売却期間が延びたり値引き交渉の材料になったりしやすい傾向があります。少なくとも生活感の強い物(衣類・布団・食器など)は先に片付けておくのがおすすめです。引き渡しまでに全撤去が条件になるのが一般的です。

Q. 古い家は解体して更地にしてから売るべきですか?

一概には言えません。更地の方が売れやすい地域もあれば、古家付きのまま売れるケースも多くあります。解体すると費用がかかるうえ、固定資産税や税金の特例に影響する場合もあります。査定の際に複数の不動産会社へ「どちらが有利か」を確認し、税金面は税理士に相談してから判断しましょう。

Q. なかなか売れない場合はどうすればいいですか?

3ヶ月以上反応が薄い場合は、価格の見直し、不動産会社の変更、買取業者への売却(相場より安くなるが確実で早い)などの選択肢があります。担当者に問い合わせ数や内覧数のデータを出してもらい、原因が価格なのか物件条件なのかを分析したうえで対策を決めましょう。

まとめ

相続した実家の売却は、相続登記から始まり、査定→媒介契約→販売→契約→引き渡しという8ステップで進みます。相続登記の義務化への対応は司法書士、査定は複数社比較、税金の特例は税理士へ相談。この3点を押さえれば、大きな失敗は避けられます。

期間は半年から1年ほどかかる息の長い取り組みになりますが、専門家の力を借りながら一歩ずつ進めれば大丈夫です。まずは相続人同士の話し合いと、複数社への査定依頼から始めてみてください。